企業のウェブコミュニケーション戦略とスポンサーシップ広告
講師:横山 隆治氏
マスメディアに多額のコストをかけて広告コミュニケーションを行なってきた企業にとって、インターネットは自社メディアを持てる大きなチャンスの到来と言える。ネットを販売チャネルとまではしなくても、ウェブというインタラクティブな環境は、コアコンシューマに対して密度の濃いコミュニケーションが可能である。
テレビは効率的に大量のリーチを獲得できるメディアだが、有力な見込み客に対しても全くそうでない人にも15秒(ないし30秒)の広告表現を一様に見せることしかできない。企業にとっては、購買見込みの高い対象者にはそれだけ充実した訴求をしたい。ウェブは情報を欲しい人が欲しいだけ(過不足なく)得ることができるメディアであり、企業にとってコアコンシューマにこうした環境を提供できるのは大きな意味がある。現状、ネットが担っている広告コミュニケーションの対象は、こうした有望な見込み客層、コアコンシューマということになる。
ただ、ウェブが企業の広告コミュニケーションに活用できるようになったといっても、その業種、商品アイテムには偏りがある。基本的に高額商品でそのスペックを検討して購入する商品において、その商品理解促進に活用するパターンがほとんどである。

上記のマトリックスは、商品アイテムを「商品に対する自己関与度(こだわり)」と「合理的な購買行動か情緒的な購買行動か」を軸にプロットしたものである。そもそもユーザー側からの能動的なアクセス行動に頼るネットでは、自己関与度が低い商品は、商品コミュニケーションという目的では対象にしづらい。また、今までウェブコミュニケーションにネット広告を活用してきた企業はほとんどがこのマトリックスの左上の象限にある。合理的な購買行動型の商品の「見込み客に対する商品理解促進」がメインの目的である。しかしネット広告によるコミュニケーションという意味では、右上の象限である情緒的購買型の商品アイテムにも応用が効くはずである。
この分野では米国が進んでおり、日本でも事例が徐々に増えてきた。嗜好品、化粧品、商品飲料のようなほとんどマス広告にコミュニケーションを頼っている商品アイテムではあるが、米国の企業は様々なネット広告活用を試みている。例えば、ヘアケア商品である「サロンセレクティブ」はAOLのアカデミー賞情報サイトをスポンサードしてコアコンシューマとのコミュニケーションに活用している。これはアカデミー賞の授賞式に来場するスターたちのドレスやヘアスタイルに関してリアルタイムでネットユーザーが質問を送り、5人のプロのヘアメイクアーティストなどが応える「インタラクティブ番組」であった。これを一社で提供するスタイルをとり、ウェブスポンサーシップ広告を成立させている。既存のスポンサーシップ広告は雑誌の「編集タイアップ」に近いもので、企業サイトでは得られないアクセス量やコンテンツをメディアサイト側に頼って記事スタイルの広告を展開するものだ。
しかしブロードバンド化が進み、高速の常時接続ユーザーが増えた現在、こうしたスポンサーシップ型広告は動画音声を駆使した「一社提供番組」になる。これはテキストや画像で「読み物」としてコミュニケーションする現在のスタイルより、情緒的購買型商品アイテムでの応用がより進むことが考えられ、ウェブでの広告コミュニケーションを活用する企業が今後も大幅に増えることが予想される。
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